未完成品

 

通信機器のサービスエンジニアをしていた何十年も昔の話である。

 

新製品が次々と出されるのだが、やたらトラブルが多い。

障害コールが一日に何件もあり、その対応だけで毎日が忙殺されていた。修理しても修理しても、また再発して呼び出しを受ける。その場の対処だけで根本的に直っていないのだ。

そして半年~1年して、対策部品が出され始め、1~2年かけてようやく落ち着く。

これが出る新製品ごとに繰り返されていた。

 

ある時、新製品の技術講習の場で、講師をしていた製品の設計チームの一人がポロっと言った。

「時間の制約もあり、製品を80%程度の完成度で出さざるを得なくなっています。迷惑をかけて申し訳ないが、よろしくお願いします。」

なんと、未完成の製品を確信犯で世に出していたのだ。

 

現在のようにソフトウェアをバージョンアップして書き換えて対応などできない頃の話だ。対応は、ハードウェア、現地での部品交換か調整である。

タイムリーに新製品を市場に投入していたのは良いのだが、未完成で出荷し、その後始末対応をサービス部門に任せたのは、妥当な選択だったのだろうか?

 

ここで。ちょっと見方を変えて見てみたい。

当時は今と異なり、新しい技術を使った製品が次々に世に出た。今より製造業が活況だった。完璧でなくても、ある程度使用可能となれば、発売していた。ある意味、怖いもの知らずの若さ・元気さがあったのかもしれない。

逆に現在は、完璧を目指すあまり、新製品が生まれにくくなっている。ある程度見切りが付いたら、完璧でなくても世に出し、それをアップデートしていくという考え方も必要だと思う。それがイノベーションにつながるのではないだろうか。

足し算の発想と引き算の発想

 

何かを考える場合、足し算の発想と引き算の発想がある。

足し算の発想は、「○○をしましょう」という推奨の発想である。それに対し引き算の発想は、「○○をしてはいけません」という禁止の発想である。

 

どちらが良いのだろうか。もちろん一長一短があり、どちらか片方では困るので両方必要だ。どちらかに偏るのではなく、バランスが大事ではある。

 

日本人の発想を見ていると、引き算の発想が多すぎるように感じる。

公園で、「木の枝を折ってはいけません」とは書かれていても、「木を大切にしましょう」という記述はあまり見ない。

仕事をする場合でも、失敗を先に考えてしまって前に進めない。

業績評価においても、成し遂げた場合は別として、挑戦したことより失敗したことに注目する。そのため、新しいことに挑戦して失敗するより、何もせずにやり過ごすことが選ばれがちになる。

給与を上げることより、物価を上げないことを優先する。結果として、実質賃金の目減りを招いてしまっているのが昨今の状況である。

 

引き算の発想が限度を超えると、その原資を食いつぶしていくことになる。原資がゼロになれば、引けなくなる。物価を上げないために人件費を下げ続ければ(一部の企業ではこれを企業努力と言っている)、最終的に人件費をゼロにしなければならなくなる。つまり、材料費等が上がり続ければ、その分人件費を削ることになり、材料費等と価格が同じになれば人件費はゼロである。引き算だけで発想すれば、このようになる。

 

足し算の発想でいけば、材料費が上がれば価格に転嫁し、それにより物価が上昇するので従業員の給与(=人件費)も上げる。従業員は消費者でもある。価格を上げても購入してもらうには、消費者の収入を増やす必要がある。これが市場原理である。

 

人の評価においても、失敗しなかったことより、たとえ失敗しても挑戦した人を高く評価するべきである。失敗しても、それから何かを学んで再度挑戦することが大切なのだ。

むしろ、失敗を恐れて何もしなかった人を減点すべきではないか。

 

経済を活気づけるには、足し算の発想を増やすことが大切ではないだろうか。

トライアスロン練習会

 

今年も、所属しているトライアスロンチームの練習会が始まった。

チームといっても、トライアスロンは個人競技なので、参加は自由、練習内容も各自の判断で行う。一応、標準として練習コースや距離(スイム1.5km、バイク40km、ラン10km)は決めてあるが、各自の判断で距離の増減は自由、種目も必ずしも3種目しなくてもよく、2種目あるいは1種目だけでもOKだ。

参加費は不要だが、事故や怪我は自己責任である。要は、朝9時に集合して一緒に練習をするだけ。

なぜそんなことのために時間を決めて集合して、という疑問がわくかもしれないが、みんなで一緒に練習するとモチベーションが上がり、競争心が刺激され、真剣になることで練習効果が高まる。皆で集まって話(雑談)をするのも楽しみの一つだ。

 

練習会は、トライアスロン大会のシーズンに合わせて、5月から9月の初めまでの日曜日に行う。例年、5月の最初は海の水が冷たい。ウエットスーツを着て泳ぐのだが、それでも露出している手や足はしびれるほど冷たく感じる。一般的に海水温は気温の1か月遅れといわれている。つまり5月とはいっても、水温は4月の気温なのだ。

ところが今年は違った。入水する時こそ、やや冷たく感じたが、泳ぎ始めると全然冷たくないのだ。暖かい(=冷たくない)水温のおかげでスイムは快適だった。

 

ひょっとすると、地球温暖化による海水温の上昇が起こっているのだろうか。もしそうなら、喜べない状況だ。

近年、日本近海で獲れる魚の種類が変わってきていると聞く。北海道ではサンマの漁獲量が減り、ブリの漁獲量が急増しているとのこと、これまでは長崎県や島根県といった南の方で獲れていたものなのだが。

練習としては良かったが、少し考えさせられることでもあった。

日本のGDP、来年は世界第5位に

 IMF(国際通貨基金)の推計によると、来年インドのGDP(国内総生産)が4兆3398億ドルとなり、日本の4兆3103億ドルを抜いて、世界代4位なるとのことだ。昨年の予測では、逆転するのは2026年とのことであったが、円安のためドル換算した日本のGDPが目減りし、1年早まるとのこと。

 

過去最高業績をうたう企業も多いが、円ベースでみた場合であって、ドルベースで見るとそうでもない。円安は輸出企業に有利といわれるが、日本のGDPは輸出よりも国内消費によるものの方が大きい。輸出といっても、海外で販売するものは実際には現地生産が多く、その販売数が伸びているわけではない。つまりドルベースでの売り上げが増えたわけではない。しかし、これを円換算して日本の決算に反映すると、円安のおかげで過去最高売り上げとなる。つまり、現状維持をしていれば、円安のおかげで円ベースでの業績が伸びる。これに甘えて、企業が努力を怠り、国際競争力を失ってきた。

 

通貨レートを直接感じるのは、海外旅行をした時だ。2001年にオーストラリアに行った時、現地の物価がえらく安く感じ、天国のように思えた。当時のレートは、1オーストラリアドル=60円 程度であった。今は約100円だ。物価変動がなかったとしても、約1.7倍になっている。さらに日本はデフレが続き物価上昇していないので、現在では2倍以上の開きとなってしまっている。つまり、オーストラリア人から見れば、日本の物価が彼らの半分以下になる。来日する外国人が、安い安いというはずである。

米ドルのレートでは、最も円の高かった時が1米ドル=75円、そして今は155円である。裏を返せば、日本人の資産が半分以下に目減りした(=貧乏になった)ということだ。

 

これまで、盲目的に円安を喜んできたツケが回ってきたたように思える。

記帳説明会に参加

税務署主催の記帳説明会に参加した。今年度より青色申告を始めた事業主を対象とした約2時間の説明会であった。

 

説明項目は、

1.青色申告制度(全体の概要)

2.青色申告制度の特典

3.正規の簿記の原則による記帳の仕方

4.青色申告書の簡易帳簿とその記帳の仕方

5.月別総括集計表・留意事項

6.消費税の経理処理と記帳

7.消費税の軽減税率制度・インボイス制度

と、盛りだくさん。大きく分けると、各帳簿(現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳)の記載に関してと、消費税・インボイス制度についてであった。

 

簿記をわかっていないので、これらを2時間で説明されると理解できたのは6割程度か。経理業務は、会計ソフトを利用しているので、何とかなるだろう。

 

最後にあった個別質問では、疑問に思っていたことが聞けたので、こちらは役に立った。2時間かけて10分間の収穫ではあったが、まあこんなものかと。

ものづくりワールドを見学

昨日、「ものづくりワールド名古屋」に行き、セミナー受講と展示ブースの見学をしてきた。セミナーは、異常検知技術実用最前線(AI導入)/ブレインズテクノロジー、金属3Dプリンタ最新動向/愛知産業、現場の搬送自動化/ヤマハ発動機、日本の設計手順の問題(生産技術)/ものづくり太郎 を受講した。その合間を縫って、各社の展示ブースを見学した。

展示ブースを回りその説明を聞くことで、新しいモノや技術的な方向性を知ることができる。ただ、いつものことだが、通路で客引きのように粗品を配り、入場バッジのQRコード(これを読み取ると、登録した社名・氏名・電話番号・メールアドレス等がわかる)をスキャンしているのには閉口する。立ち止まっただけで、プレゼント品とカタログ資料を渡して、QRコードをスキャン、説明を聞くかどうかは二の次である。そして後日、営業電話がかかってきたり、メールが送られてきたりする。集客数のカウントは増えるだろうが、効率が良いとは思えないのだが。

セミナーでは、新しい知識を得たり、これまで気づかなかったことを確認させてもらえたりする。事前予約が必要だが、無料で受講できるのは、ありがたい。


昼食は、キッチンカーが出ている屋外でとった。天気も良く、朝方は肌寒かった気温も上がり、お昼には上着が暑く感じられるほどに。早朝来場特典として500円の食事券ももらえた。早起きして、来たかいがあった。豚丼にしようかと迷ったが、鴨ロース丼を食べた。肉もたっぷり載せられており、おいしかった。来年は豚丼を食べてみようと思う。

そんなこんなで、有意義で楽しい一日だった。


※ 展示会場内とセミナーは撮影禁止なので、写真は無し。注文した鴨ロース丼は取り忘れ。

入場ゲート



心の中にある過去の幻想

 「日本は、解雇されにくく、貧富の差も少ない」というのは過去の話で、既に崩れつつある。という話は何年も言われ続けてきているが、それでも心の中ではそう思っていない、認めたくないという人が多いのではないだろうか。

 

2019年発表のOECD雇用保護指標によれば、

解雇されにくい国のトップ3は、

  1位:チェコ、2位:イスラエル、3位:ポルトガル

解雇されやすい国のトップ3は、

  1位:アメリカ、2位:スイス、3位:カナダ

となっている。

日本は、記載されている37ヶ国中、

  解雇されにくい順で25番目、

解雇されやすい順は13番目であった。

どちらかというと、日本は解雇されやすい国だと評価されている。

 

では、貧富の差についてはどうだろうか。

OECDによる主要国貧困率ランキングによれば、

貧困率の高いトップ3は、

  1位:南アフリカ、2位:ブラジル、3位:コスタリカ

貧困率の低いトップ3は、

  1位:アイスランド、2位:チェコ、3位:フィンランド

となっている。

日本は、記載されている43ヶ国中、

  貧困率の高い順で12番目であった。

ここで言っている貧困率とは相対的貧困率、簡単に言えば貧富の差を表すもので、絶対的貧困率(例えば1日1ドル以下で生活する人の割合)ではない。

 

こう見てくると、「日本品質」「技術大国」といった言葉もいつか幻想に変わってしまうのではないだろうか。いや既に幻想で、気付いていない、あるいは心の中で認めたくないだけなのかも知れない。

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