未完成品

 

通信機器のサービスエンジニアをしていた何十年も昔の話である。

 

新製品が次々と出されるのだが、やたらトラブルが多い。

障害コールが一日に何件もあり、その対応だけで毎日が忙殺されていた。修理しても修理しても、また再発して呼び出しを受ける。その場の対処だけで根本的に直っていないのだ。

そして半年~1年して、対策部品が出され始め、12年かけてようやく落ち着く。

これが出る新製品ごとに繰り返されていた。

 

ある時、新製品の技術講習の場で、講師をしていた製品の設計チームの一人がポロっと言った。

「時間の制約もあり、製品を80%程度の完成度で出さざるを得なくなっています。迷惑をかけて申し訳ないが、よろしくお願いします。」

なんと、未完成の製品を確信犯で世に出していたのだ。

 

現在のようにソフトウェアをバージョンアップして書き換えて対応などできない頃の話だ。対応は、ハードウェア、現地での部品交換か調整である。

タイムリーに新製品を市場に投入していたのは良いのだが、未完成で出荷し、その後始末対応をサービス部門に任せたのは、妥当な選択だったのだろうか?

 

ここで。ちょっと見方を変えて見てみたい。

当時は今と異なり、新しい技術を使った製品が次々に世に出た。今より製造業が活況だった。完璧でなくても、ある程度使用可能となれば、発売していた。ある意味、怖いもの知らずの若さ・元気さがあったのかもしれない。

逆に現在は、完璧を目指すあまり、新製品が生まれにくくなっている。ある程度見切りが付いたら、完璧でなくても世に出し、それをアップデートしていくという考え方も必要だと思う。それがイノベーションにつながるのではないだろうか。

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