熟練工の消滅

 近年、航空機大手のボーイングに事故が頻発している。機体の設計上、構造上、使用パーツに起因する問題もあるが、それ以外に製造上の問題も多々発生している。

1月には、パネル固定のボルト4本を締め忘れたことにより、離陸直後に側壁が吹き飛ぶ事故が発生した。その他、事故には至らなかったものの、間違って開けた窓枠の穴の補修が50機に必要になった、納入済機のボルトの緩み点検を要請した等々がある。 

原因の一つとして考えられているのが、熟練工の消滅である。コロナの影響で新型機の受容がなくなったため、2020年に28000人を解雇した。その後需要が復活したため、2021年から2023年にかけ55800人を新たに雇用している。

コロナ渦以前は6年以上の経験者が半数以上いたのに対し、現在は25%以下になってしまっているとのこと。航空機の組立製造は手作業も多いため、かなり品質に影響しているようだ。改善には数年かかりそうとの見方もある。


熟練工の技量を数値で表すのは困難である。しかし、その価値を軽視することはできない。目に見えない価値の軽視が、目に見える損失につながる

日本でも、熟練工のもつ技術やノウハウを継承できていない問題が多々発生している。熟練工の持つ技術・経験・ノウハウは、その会社の目に見えない財産なのだ。企業がゴーイングコンサーンであるのと同様に、技術・ノウハウも継承していかなければならない。単に経営上の人数合わせのために、これを手放してしまうのは実にもったいない話である。

初回取引は、ご祝儀価格とご祝儀品質

 製作を依頼する外注を決める際、確認事項は沢山あるが、最も重要なのが品質と価格である。製造現場の状況や設備、管理体制などは、訪問して監査を行うが、品質と価格を確認するには、サンプルを製作してもらい、その見積を見て判断することが多い。

サンプル品の出来が良く、見積価格も他社より安ければ、他に問題がない限り外注先に加えることになる。

問題は、その後に発生してくることがある。

サンプル品の出来も良く、初回納入品が品質・価格とも問題なく納入されてくる。順調で問題ないと思い、安心感もただよい出す。

しかし、時期が経つと、その外注からの製作品の品質が落ちはじめ、不適合となるものが発生し出し、その率が高くなってくる。梱包なども雑になってくる。クレームをつけ、対策と改善の要求を繰り返すことになる。

次に、別のものの製作を依頼すると、初回の見積価格水準に比べかなり高くなっている。

つまり、初回取引は、ご祝儀価格ご祝儀品質だったのだ。注文を取るために、こういうことを行う外注先が しばしば見受けられる。

逆の立場であったが、以前勤めていた会社で、営業が試験結果の中からチャンピオンデータを持ち出し、それをサンプルとして客に提出して受注したことがあった。チャンピオンデータの再現は難しく、後で困ったことがあった。これも、注文を取りたいがために行われたことだった。

失われた30年の本質とは?

 「失われた30年」を抜け出すことは出来るのだろうか。株価は、一旦過去最高値を付けた後、やや調整状況になっているが、その様相を見せている。賃上げも、大手企業から中小企業まで広まりつつあるようなニュースも流れている。来年以降もこの状態が続くのであれば、期待できるのかも知れない。

 昨年107日の日経電子版に、暗黙知/形式知(SECIモデル)を提唱した経野中郁次郎氏が著書である「失敗の本質」を通じて、失われた30年について語っているので取り上げてみたい。

 野中氏は、企業におけるPDCAにおいても、P(計画)とC(評価)ばかりが偏重され、D(実行)とA(改善)に手が回って来なかったと言っている。計画や手順に完璧を求めた計画偏重は環境変化に対する思考停止を生む。

これらは、事なかれ主義やリスク回避、忖度の文化を生まれやすくする

 野中氏の著書「失敗の本質」は、旧日本陸軍の戦略のあいまいさ、短期志向、集団主義、縦割り、異質性の排除といったことを取り挙げているのだが、失われた30年においても、根底にある問題は同じであったと言っている。

 確かに言われてみれば、「前例はあるのか」、「様子を見ながら」、と言って新しいことに手を出したがらないことが多々あるように思う。通常の生活においても、「危ないことに手をださずに」「ほどほどに」「これに懲りて」「寄らば大樹の陰」等の文言がある。善意に解釈すればその通りなのだが、見方を変えればリスク回避で消極的、事なかれ主義にも通じる。

 高度成長期の日本は、ハングリー精神でリスクを克服していたと思う、しかし、バブル崩壊を経てそれがなくなり、残ったのは成功体験だけだったようだ。

野中氏は「考える前に感じろ」が成功の本質だと訴えている。

 私は、「失われた30年を脱却できるかは、株価や賃金だけの問題ではなく、リスクを取って新しいことにチャレンジするマインドを復活できるかにかかっている。」と思う。

趣味で設計はできない

 本当に自分の好きなことを仕事にしている人は少ないと思う。プロスポーツの選手には該当する人が多いのかもしれないが、一般の人の大半は、何らかの妥協をしてその仕事をしていると思う。

そういう意味で、好きなことを仕事にしている、あるいは仕事が好きという人は幸福だと思う。しかし、仕事が好きということ、趣味が仕事あるいは仕事が趣味というのは同じではない。大きく異なる。

設計においても、設計という仕事が好きな人と、設計を趣味でやる人は同じではない。出来上がった設計も異なる。

製品を設計するにおいては、使用目的や使い勝手を最終ユーザの立場に立って考え、さらにコストも考慮しなければならない。

設計を仕事としてする人は、当然これらを第一に考える。

しかし、趣味として設計をする人の場合、設計をする本人のやりたいことが最優先となり、ユーザの使い勝手やコストは後回しにされてしまう。 

設計を仕事としてとらえれば、その先にあるのは顧客(ユーザ)であり、利益を生むためのコストである。これが趣味になると、本人の満足が最優先となる。どちらが製品として価値があるかは考えるまでもない。

これが、「趣味で設計はできない」の理由である。

日経平均株価が過去最高値を更新、バブル期と比較

 

222日に、日経平均株価がバブル期の19891229日につけた3891587銭を超え3909868銭、その後も最高値を更新している。
34年経過してやっと更新できた。それらの考察は専門家に任せるとして、ちょっと別の視点から見てみたいと思う。

 
まず、19891229日と2024222日の日経平均株価を円ベースと米ドルベースで比較すると、
・円ベースでは、3891587 3909868 と上昇している。
・米ドルベースでは、271.38ドル 260.22ドル となり、また追いついていない。
ちなみに、19891229日のドル円相場は15025銭、2024222日のドル円相場は15025銭であった。円ベースでは過去最高値だが、米ドルベースではバブル期の最高値の方が高い。

では、米ドルベースでは、まだバブル期の最高値を更新していないのだろうか。
実は、2021113日に273.91ドルと最高値を更新していた。この時のドル円相場は10389銭であった。

日経平均株価を見るにおいて(他の指標も同様だが)、円建てだけでなく、米ドル建てで見てみることも必要でははないだろうか。

 
次に、バブル期の当時と現在の一般の人の感覚を比較してみたい。
バブル期を経験していない人にとって実際の感覚はないと思うので、実際に経験した私の感想を述べてみたい。

当時は誰もそれがバブルだ゜とは思ってはいなかった。仕事は山のようにあり、人手は足らず、毎日残業の連続で忙しかった。毎月3ケタの残業時間が発生、それには閉口したが給与はそれなりにあった。株や不動産に縁のない一般の人にも恩恵があった。街中が活気にあふれ、飲食店は常に満席、ブランド品が飛ぶように売れていた。

しょっちゅう会社の経費で飲み食いした。
ある日飲んだ帰りに乗ったタクシーの運転手に「よくその若さで、あんな店に飲みに行けますね」と言われたことがあった。自分で支払いをしていないので知らなかったのだが、かなりの高級店で高い店だったらしい。でも本当は、そんな店に会社で飲みに行くより、普通の居酒屋に仲間と行く方が楽しかった。

それに対し、今は好景気を感じられるものはない。株価が上がっても一般の人には恩恵がない。この辺が当時との大きな差ではないだろうか。バブル期当時は、幻ではあったが将来への期待(明日は今日よりすばらしい)があった。今はそれがない。良く言えば、地に足が着いているということかも知れないが。
 

バブル期を今考えると、成金がムダ金使いをしまくった時代だったと思う。もう少し、お金の使い方を考えるべきであった。
例えば社会インフラにしても、今問題になってきている危険で景観も悪くしている電柱を廃止して、電線ケーブルを地中に埋設するといったことが実現できたのではないだろうか。

ブログ開設にあたり

 

皆様、こんにちは。 

このたび、ブログを開設する運びとなりました。私は電気・電子分野での経験を持つ元エンジニアであり、現在は技術コンサルタントとして活動しています。興味のある方は、左上のタブ「オフィスKZI(マイ事業サイト)」又はここをクリックしてみてください。

 このブログでは、これまでの経験や現在進行中の出来事について、私なりの考えをお伝えしていきたいと思います。もちろん、プライバシーを守るため、必要に応じて仮名を使用することもあるかと思います。技術的な話題だけでなく、他の話題やニュース、また個人的な身近な出来事にも触れていきます。

 よろしくお願いいたします。

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