ある時、所属していた設計部門の責任者が替わった。そして、ある変化が発生した。
新たな設計を始めるには、方針、方法、計画を責任者である彼に説明することになったのだが、それらがほとんど却下される。そして、方法を彼の方から押し付けられる。
社内にそこまで発想を規制したルールはない。何のことはない、彼の好む方法、理解できる方法でしか設計できなくなってしまったのだ。斬新なアイデアはほぼ却下されてしまった。
ただし、新人は喜んだ。方針、方法、手順を示してくれるので。それらを考えなくてもよくなった。示された筋書きに沿って進めていけば。とりあえず設計できてしまう。
彼が示す筋書き(方針、方法等)に沿っていれば、設計業務をこなすことはできるので、ある意味楽だ。しかし、これでは新しいアイデアは生まれず、技術者としての能力も向上しない。設計能力が彼の理解の範疇に留まってしまい、それを越えられなくなってしまう。
確かに、他の部門と異なり、設計部門の責任者は大変である。絶えず新しい仕様やそれに関する新技術が持ち込まれ、本人の理解を超えることが多々発生する。通常のルーチン作業ではないのだ。
しかし、だからこそ部下の自主性、発想を認めなければならない。完全に理解できなくても、それを承認し、何かあったときには責任を取らなければならないという理不尽さはある。だが、それをしないとその会社の技術的な成長は望めない。
追)このことが遠因となり、私は社を去ったので、その後についてはわからない。