通信機器のサービスエンジニアをしていた時のことだ。
新規の顧客が、その性能に満足してくれない。機器の設置時にも問題なく、運用後の保守点検でも問題は見つかっていなかったのだが、なぜか不満のようだ。
確認すると、機器の導入に際して、営業から提示されたデータサンプルと実際との差が大きく、そのサンプルデータの内容が一度も再現できていないとのことだった。
顧客に頼みそのデータを見せてもらった。たしかに素晴らしい記録だった。データを持ち帰って社内で確認をしたところ、製品の試験で記録をとった内のチャンピオンデータであったことが判明した。
チャンピオンデータは、全ての環境が最良で、測定を繰り返すうちに発生したほぼ再現困難な最高記録のデータだ。実際の運用で再現されることはないといってよい。
担当した営業は、受注したい一心でチャンピオンデータを顧客に提出したのであろう。
本来これは、社外秘に該当するデータ、顧客にみせてもらっては困るものだ。どのようにしてその営業がデータを入手したのかは不明だが、あってはならないことであった。
試験的に何度も繰り返し測定したデータであったとしても、その取り扱いには要注意である。特に、社外への持ち出しについては十分な注意と管理が必要だ。