軍用機のトレードオフ

 

最近、米軍、自衛隊と航空機の事故が相次いでいる。共通項は軍用機という点だ。

 

この件について、以前にこれらに関係しているエンジニアと話をしたことがあった。彼の口から最初に語られたのは「軍用機は落ちますよ」という言葉だった。

もちろん、墜落するように設計・製造されているのではないのだが、民間の旅客機と比べれば事故率が高いということであった。

旅客機は、何よりも安全最優先で作られる。しかし、軍用機は安全だけでなく、高い性能も要求される。いくら安全でも、性能が劣れば使い物にならないというのだ。そのため、複雑になり、操縦や整備も含めて事故が発生しやすくなるとのことだった。つまり、安全と性能がトレードオフの関係になっているとのことだった。

 

では実際の事故率はどの程度なのかと調べてみた。

旅客機の場合、2024年のテータでは、

 ・事故率:約88万便あたり1件(100万便あたり1.13件)

 ・死亡事故:4060万フライトで7

(情報源:IATA2024年の安全報告書)

 

軍用機の場合、ほぼ未公表だが、2021年アメリカ陸軍の有人機(回転翼+固定翼)では、

 ・事故発生:10万飛行時間あたり6.95件(クラスAC

 ・重大事故:10万飛行時間あたり0.87件(クラスA

(情報源:Aviation Assets 2021年度アメリカ陸軍航空事故発生状況」)

 

詳細条件が異なるので、厳密な比較はできないが、それでもかなりの開きがある。

 

スポーツに例えてみるならば、民間旅客機は趣味や健康のために行う一般人の領域軍用機はリスクをとっても高い難度に挑む一部のエリートアスリートの領域と言えるのかもしれない。

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