「部署の垣根を越えて・・・」とは、よく言われる。垣根を越えての後には、「連携」「協力」「コミュニケーション」といった言葉が続く。
それらの範囲であれば問題ない、むしろ良いことなのだが、「部署の範囲を超えて・・・」が度を過ぎると越権行為に繋がる。
実際にあった話だが、営業技術の人間が、対顧客との技術折衝だけでなく、価格交渉や見積作成を行い、社内においては、設計から外注交渉までしてしまっていたことがあった。
顧客にとっては、技術的な話だけでなく、本来なら営業が担当する価格交渉から納期の話まで、一人の窓口でできるのだから利便性がよい。
社内においては、顧客と折衝して決めてきた仕様を確認する必要がなく、部材の調達や外注作業まで対応してくれるので、担当部署にとっては手間が省ける。(設計部門は実設計の手間が省け、部材調達部門は手配の手間が省ける)
ただし、実際の権限はないので、作成した書類に担当部署の担当者が書類作成者としてサインまたは捺印していた。
こんなことを続ければ、やがて問題が発生する。詳細な中身を誰も知らないので、営業技術である彼が間違ったり暴走したりしても止められなくなる。というか、間違いや暴走にも気が付かない。
どこかにシワ寄せが来ることはよくあったが、ある時とんでもないことが発生した。
仕様に対してあまりにも安い価格の見積もりを正式見積書として顧客に提出してしまった。見積価格をどのように決めたのかは、誰も相談を受けていないので不明、見積書に署名した営業は、中身を理解せずサインしていた。
これで製造すれば、大赤字間違いなし、ほとんど工賃が入っておらず、部材の調達費(購入品)だけでほぼ消える。作るごとに赤字が生まれる。
その後、担当営業と担当営業技術を変更して、顧客と再交渉して何とかした。(最終的に、問題を発生させた営業技術と営業は退職した)
部署の垣根を越えて協力し合うのは、各部署が仕事をきちんとこなした上での話であって、越権行為をすることでも、中身を理解せず丸投げすることでもない。